2011年11月27日

恋の迷い道(3)〜のめりこむ〜

ゲイとしての本格的な恋愛に結び付くまでには時間がかかった。
こころのどこかで、いけないことだと思っていたからだろう。
ネットなどの情報収集ツールがあるわけではなかったし、
テレビやラジオでは見つけられなかった。

でもあのおじさんの顔はしっかりと覚えていたので、
また偶然に出会えないものかと、密かに思っていた。
ずっとその感触が忘れられないでいた。
一度インプットされたことを忘れることは難しい。
しかしそのおじさんには二度と会うことができなかった。

満員電車の中で、きょろきょろとしているのだから、
見る人が見れば、探しているな…って簡単にわかったのだと思う。
ある日、僕の近くに別のおじさんが寄ってきて、
僕の股間に触れるようになってきた。
最初はあの懐かしい感覚を思い出したので、なすがままにしていた。
しかしおじさんのパワーはすごい。
どんどん触り方がエスカレートしていく。
電車の中でチャックを下して、
直接触ろうとしてくるようになる。
またおじさんの股間を触るよう、無理矢理手をひっぱられたりもした。
毎日のように乗る時間を合わせて、僕を狙ってくるようになった。
そうなってくると
「僕にはもうこれ以上近づかないで!」って感情が湧いてくる。
そのおじさんからできるだけ逃げるようにしていた。
もう苦痛以外の何物でもなくなった。
男への思いは強くなるものの。
電車の中での行為からは離れたい気持ちでいっぱいだった。

薔薇族.jpgそしてある日、書店で何気なく本を探していたら、
「薔薇族」を手に取ってしまうのである。
その衝撃は大きいものだった。
しかし買うほどの勇気は持っていない。
運悪く「薔薇族」を見つけたのは、地元の駅近くの本屋。
そんなところで帰るはずがない。
それでも気になって、気になって、仕方ない。
時折本屋に行っては、そっと手にとって、
周りを見回して人がいないところで、ページを開いた。
高校生の僕にとっては刺激的過ぎた。

ある日、どうしても手に入れたくなって、
他の本の下に隠し、レジに持って行った。
本屋のおじさんに「子供が読む本ではない」と大きな声で言われ、
逃げるように帰ったことを覚えている。
何も見つからないまま、時は流れていった。

2011年11月11日

恋の迷い道(2)〜目覚め〜

満員電車.jpg

高校に入って、電車通学するようになる。
僕の高校は、蛇腹の制服だった。
しかも丈が短めの設定なので、3年になる頃にはつんつるてん。

ある朝、その出来事は起こる。
足の踏み場もなく、一度捻じれたりすると、戻れないくらいの満員電車内。
僕の前に、びったりとおじさんがくっついていた。
自宅の最寄り駅から、2駅目に差し掛かった頃、
下半身に違和感を感じた。
僕の息子の辺りに、刺激を感じたのである。痴漢だ。
咄嗟にそうは思ったものの、身動きが取れない。息子が反応してしまう。
最初は手の甲が当たっていただけだったが、
その反応をいいことに、手のひらで触れてきた。
静かに息子をズボンの上から、摩り始められる。
そして激しい揉み方に…。
高校生の僕は、ひとたまりもなかった。
でもそのおじさんがとても強面だったから、
「痴漢です」って声を上げることもできなかった。
電車の揺れに乗じて、少しずつ離れようとして、
数駅後には、何とか離れることに成功する。

その時はどうしていいいかわからず、
嫌な思いでいっぱいだったのだが、
後で振り返って、ドキドキする出来事というか、
脳裏から離れない何かを感じた。
その時の感覚を思い出しながら、何度もひとりでしたりした。

何だか今こうして思い出しても、
あの日の出来事は克明に覚えている。
中学時代に気づいた、男性への思いは、
いけないことと思って、封印していた。
あの日から、またむくむくと起きだしていた。

2011年11月03日

恋の迷い道(1)〜中学時代(黎明期)〜

プール.jpg

男に興味があると初めて意識したのは、中学に遡る。
2年の頃、男子トイレに入ったら、中央に人だかりが…。
人を囲んで、何だかみんなが騒いでいる。
早い人は陰毛が生えてくる時期で、隣のクラスのM君がそれを周囲に見せつけていた。
僕は妙な興奮を覚えながらも、
いけないことと判断して、担任に言いつけにいった。
今考えると、凄く嫌な奴。
その時のドキドキが何故か忘れられなかった。
M君のそこをもう一度見たいとか、
その時のシチュエーションを思い出しながら、興奮していた。
あの出来事で、スイッチが入った気がする。
自分がゲイであるかもしれないと思った瞬間だ。
といっても当時ははっきりと認識があったわけではないけれど…。

まだちゃんとした恋愛すらしていない僕だったが、
それからは男の裸が気になるようになる。
夏になるとプールがある。
流石に授業中には、そんなことを考えてもいなかったが、
放課後、水泳部が練習していると、それとなく覗いていた。
そこで見つけたのが、P君。今で言うがちむちタイプ。
水泳選手としては、がっちりしすぎていたのだけれど、
とても好きな体型だった。
たぶん初恋。勿論片想い。遠くで見ているだけ。
それでも十分だった。

何年か前に同窓会があって、そのP君も来ていた。
クラスごとに名前が紹介されるまで、P君の存在には気付かなかった。
だってでっぷりと太ってしまって…。
あの時の爽やかさが…。
僕の中にあった幻想が、もろくも崩れていく。
初恋なんて、そんなものかもしれない。

淡い思い出の中にある当時の映像を、
僕は今でもはっきりと覚えている。
引き締まった筋肉。肩幅が大きく、がっちりとした体格。弾ける笑顔。
それらをそっと僕の胸の内にしまっている。